きみのうた



「でも泣きすぎだって・・。とにかく泣き止めって・・・」

そっとあたしの涙を拭う倉井君の手はとても優しくて。

もっと涙が溢れて来た。

「ちょい!泣くなっての!」

「だって・・だって・・!」

「あははっ。面白いな、お前」

「笑うなんてひどいじゃん・・」

けど、笑ってる倉井君を見るとちょっと安心した。

「はー。楽になったわ。ありがとな、笹野」

あたしを向いてあたしに笑う。

初めてあたしに向けて笑った。

「学校行くか?」

「いーよ、別に。まだツラいでしょ?ツラい間はここに居よ。あたしで良ければいつでも居るからさ」

倉井君に笑い返す。

「笹野は、好きな男居んの?」

「んー、居るよ」

「そっか。どんな奴?」

「・・なんで聞くの?そんなこと」

笑って聞き返す。

「だって俺に出来ることがあるならしてやりたいからさ」

「・・鈍いよ、倉井君。何もしてくれなくていいよ」

立ち上がってスカートを直す。

「あたし、先に学校行くね。後から倉井君も来なよ」

「ちょ、笹野!」

後ろから倉井君の呼ぶ声が聞こえた。

でも振り返ったら泣きそうで。

頑張って振り返るのを我慢した。