「待ってよ、しーくん!!」
「やだよ、みずっちが追い付けばいいじゃん!!」

そう言ってしーくんこと"岡田紫苑(オカダシオン)"は私のランドセルを持って無邪気に笑った。

小学一年生の二学期最後の日。

午前だけで学校がおわり、通知表をもらって、明日から冬休みだという空気にみんなが胸を踊らせていた。

「もぉ、しーくん!?返して!!」
私がランドセルを持った紫苑を追いかけていると、突然紫苑が立ち止まった。

背中にぶつかる。

「いたっ!!しーくん!?」
「みずっち、あれ見て」

しーくんが指をさした先には…

「わあっ、かわいい!!」

小さな小さなゆきだるまがいた。十センチぐらいでちゃんと目や鼻まである。

私がゆきだるまに目をやった隙に、紫苑が私のランドセルを空へ投げた。

「うわああっ!!ちょっ、しーくん!?」
「やった、おれの作戦勝ち!!」
空に放たれたランドセルが回りながら落ちてくる。