電車に乗って一駅先の駅で降りて。
「へーここか」
私の家の場所を隣で確認するさとる。
「じゃあ…またね」
握られていた手を解き、さとるから離れたら
ぐいっと腕を捕まれた。
「携帯」
「は?」
「連絡先教えろよ」
「え?あぁ、うん」
そういえば、さとるの携帯番号知らなかったっけ。
携帯を取り出して、赤外線で交換する。
交換し終えたら、パチンと携帯を閉じたさとる。
それから、にっこり笑顔を浮かべて
「またな」
私の頭をぽんっと撫でて、去って行った。
にっこり笑った顔が、凄く優しくて。
携帯を握りしめたまま、なぜか体が動かなくて、さとるの背中を眺めていた。
「また…ね」
そうさとるには、絶対聞こえないくらいの小さい声で呟く。
その夜はさとるにまた近付いた気がして、心がぽかぽかした。