小田君にはブリッ子したって全く通用しない事が解った。


今度は数十メートル離されて必死に付いて行った。


エッジを立てきれずに転倒し、そのままズルズル数十メートル下まで落ちていく羽目になった。


無理に止まろうとして板を立てると足が折れそうだったので、大の字になって止まる事にした。いきなりの醜態をきっと彼も見ていたことだろう。


始めに声を掛けてきたのは見知らぬ女性であった。


「大丈夫ですか?」


「あは…なんとか大丈夫です。ありがとうございます。」


しばらくその場にたたずんでいると上から小田君がやって来た。


「ウルトラマンか!」


「あはは!まじで。めっちゃ恥ずかしいんやけど、どうしたらいいの?」


「動けるのか?」


「うん」


「じゃあ滑りなさい。もっとターンのとき踏ん張らないと!横へ行くと新雪にはまるから気付けてな」


「うぁ~ん」


《シャー》


行ってしまった。


(なんなん…あのスパルタ加減は…)


とにかく上達しなければお話しも出来ない状態だった。


何度か転びながら下までたどり着き、その場で勝手に休憩する事にした。


「何さぼってるん!」


「え~むり~今すぐ行く気になられへん!」


「じゃあ俺もう一回滑って来るから、今度は一緒に行くんだぞ」


「解った…ぅ~」


滑るのが怖すぎて泣きそうだった。


次に一緒に登った時は頂上でまごついている私を誘導して少し奥の平らな場所に連れて行った。


彼は自分の板を外し何をするのかと思えば、板とストックで器用に椅子を作って見せた。


「わーすごーい!こんな事できるんや~♪」


「はい」と手を差し伸べ
「しょうたろうのも作ってあげる」
と言った。