早起きしてスキーに出かけると母さんに伝えると「誰と?」と聞かれた。


「会社の男の子と」と正直に答えると、口角の片方だけを上げて少しニヤけて「へぇ~~」と返って来た。


そんな何か言いたげな母さんを捨て置き、父さんに告げ口される前にさっさと家を出た。


表通りに出て以前と同じ場所で小田君が来るのを待っていた。


スキー板を積んだ小田君の車が現れた時、心臓がキュっとなった。


車のドアを開け
「おはようございます!」
と元気に言ってみた。


「朝から元気だね~!」


「うん!」


「ほんじゃ行くか!」


「うん!」


前回ドライブに行った方向に車を走らせていた。


「あれ?こっち方面?」


「うん。オイラんちのもっと向こうの秋田県寄りの地元の奴しか行かない様なスキー場なんさ」


「へ~どんなコースがあるの?」


「そんなの上級者一本しかないよ」


「まじで?!滑れるんかな私…」


「滑れないだろうなぁ」


「え~こわいな~」


「スキーなんて気合でどうにでもなるんだって。チンタラやってるから上達出来ないんさ」


「ひえースパルタやん…」


「あったりまえだろ!」


「…やば~い…」


「大丈夫、大丈夫。」


小田君はマユちゃんの話は切り出さないで居た。


(今日はデートを楽しむって事か!)


きっとマユちゃんには私とデートする事は伝えたのだろう。


だけどマユちゃんの中ではデートするイコール二人の関係を終わらせる、には繋がらないのかもしれない。


きっと何も言わないって事は未だ決着がついてないんだろうと思えた。


それもそうだ。まだ少ししかお互いの事を知らないのだから、今はお互いを知るために今日という日を迎えたのだ。