雪・時々晴れ

数日後、デザイン室の勤務の日に階段の踊り場でじゃれ合っている小田君と菅原君に出くわした。


私は小田君と目が合い「やぁ」と言ってみた。


彼は「とぅ!」と返してきたが、どうリアクションしていいか解らずに「何それ…」と言ってみた。


「“やぁ”ってきたら“とぅ”だろ?」


「そーですかね…」


菅原君がニヤニヤしながら小田君を見ていると、彼は菅原君のお尻を軽く蹴ってあっち行けって態度を示した。


菅原君がメンテ部の事務所の方へ去っていくと小田君は静かな声で


「君んちの電話って社員の住所録の電話番号でいいんだよね?」


「うん」


「今日の夜、電話するから出て」


「…解った…ぐぶっ」


「ぐぶぅ?…何か吐くんか?!」


「吐かへんよ!じゃー夜ね!」


緊張して小声で話したら変な声が出て死ぬほど恥ずかしかったが、その後仕事中に思い出し笑いを堪えるのが大変だった。


(ぐぶっとか言うてまうか~~~~~もぉ最悪)







家に帰ってからはとにかく電話の側にはりついた。


(何時にかけて来るのか聞けば良かった…)


うちの電話は1階に親機があって2階の自分の部屋には子機があるけれど、ワンコール遅れて子機が鳴り出すはずだったので、親が先に出てしまったらいけないと思い、1階で“早くかかって来て”と願って待っていた。



《プップルルル…》


(小田君や!)


《ガチャ》


「もしもし…」


「やぁ」


「あ~チョット待ってな」


2階の子機で話す予定だったので早速保留にした。


母さんが誰って聞くのも予定の内だったので用意していたセリフを言った。


「大阪の友達からやわ…久しぶりやし2階で喋ろ~っと」


上手く騙せたかどうかは解らなかったがとにかく2階へ急いだ。