もぐもぐもぐ
時折、食器とスプーンが擦れあった音が混ざる。
「……飲み物、貰えないかしら」
不躾だとは思うが、喉がかわく。
「ぁ、あぁっ」
月宮が慌てる様子で席を外した瞬間。
かっかっかかかっ
猛スピードでビーフシチューを口に流し込み、完食。
やることがないにせよ、月宮が私を、じーっ、とひたすらに見るから食べにくかった。
「ん、水」
「ありがと」
ごくごくごくっ、だんっ
「ごちそうさま、帰ります。ありがとうございました!」
一気に水を飲み干して、席をたった。
横目に見た時計は六時はん。
開いたら黒のカーテンを見るに、朝だろう。本当に、今日母親が泊まりでよかった。
ったく、今日は私の誕生日だっていうのに。
ふと、携帯が点灯しているのに気がついて携帯をとる。
ーー留守番一件『お母さん』
嫌な予感がして、携帯を耳にかざした。
『麗愛。先にご飯食べてて。分かってると思うけど、母さん忙しいの。それでね、分かると思うけど、今忙しくて……。仕事が入って、明日帰れそうにないわ』
留守番内容はこれだけですーー。
電子音が耳に響く。
誕生日おめでとう、の一言さえ、入っていなかった。
忙しいのは、わかってる。分かっているけど。
誕生日は必ず《家族》集まって祝おうって、約束してくれたじゃない。
なんだろう。視界が、歪む。