「俺ね、複雑な家庭環境で育ったから、 物心ついたときから周りの顔色ばっかり伺って生きてきた。 今こういう表情で、こう言えば相手が喜ぶな、とか、いつの間にかわかるようになってた。 まぁ、空気が読めるってやつ。 芸人にとっては最高のことだった。 その場の空気を読んで的確なコメントを言えたしね。 先輩からの評判もいいし、プロデューサーにも気に入られてる。 芸人は俺にとって天職だと思ってる。」 どこか遠くを見てゆっくりと話す柘植さん。 その切なそうな横顔をジッと見つめて、胸が苦しくなる。