「このマットを考えた奴は天才だな。」

幸大は畳サイズの水に浮かせるマットに乗り寝転がって流れるプールを漂っていた。


「逃亡者、発見ね。」

亜紀がマットに捕まる。

「亜紀か。

皆は?」

「それぞれね。

奈都は石動さんと遊んでるわ。


学園長はふらふらしてるからわからないけど。

神宮寺さんは狭山先生とウォータースライダーを何回も滑ってるわ。」


「お前は何をしてんだ?」

「…たまには、一緒に遊ぼうかと思ったのよ。」


「そうか。

乗るか?」

「二人も乗って大丈夫なの?」


「大人3人でもぎりぎり大丈夫って書いてあった。」

「じゃあ、失礼するわね。」

「今、場所を空けるから。」

「そのままで良いわよ。

よいしょ、と。」

マットに乗り寝転がる。


「…。」

「…。」

二人は無言のまま流される。

「何か話してよ。」

亜紀が言う。


「何かって?」

「私の水着、どう?」

「可愛いと思うけど?」

「可愛いなんて久々に言われたわ。」

「そうなのか?」


「幸大くらいよ、未だに可愛いって言うのは。

皆は綺麗って言うから。」

「お前はどっちが良いんだ?」

「どっちでもそれが本音なら良いわ。

お世辞なんか嬉しくないもの。」