…。

美樹…。

「こんなところで寝て、風邪ひくぞ。」
「顔色、悪いな。」
「早く、うちに帰ろう。」

「み…き…。」



なんで、返事してくれないんだ?

きっと、これは俺の美樹じゃないんだ…。



「アーン、アー…」


聞き慣れた鳴き声が、聞こえる…。

……、近づいてきた。

「か…りん…」

娘だ。
警官に抱かれてる。

なんで、こんなとこにいる?


「…佐久間 要 さんですね?…この子は…娘さんの果林ちゃんで間違いないですね?……。」

果林の鳴き声で、警官の声がよく聞こえない。

「パパぁ…」

果林が抱かさってきた。

「奥様で、間違いございませんか?」

「…はい。」

「では、手続きと説明がありますので、こちらへどうぞ。」

「…お手数、…おかけします。」

俺、何冷静に答えてるんだろう。



「…奥様は、お嬢様と買い物に出かけた際、お嬢様が道路へ飛び出してしまったのを助けようと…」
「…外傷はほとんどないのですが、車と接触した際に後頭部を強く…」



みき…。
俺達、出会って、もう10年になるね。

初めて会ったのは…、居酒屋…だったね。