ハァッとして起きてみて夢を見ていたようだった。
いたって単純な動作で寝床から起きて、着替えをすませる。
「おはようございます。お一人で着替えたんですか?」
「あぁ。そうだが。
だいたい二人の時は普通にしろとあれほど…。」
瑣萬の方を見ると、にっこり笑顔で毒気を抜かれた。
「二人の時だけですからね。
お帰りなさい。龍轍」
「ただいま…。」
改めて言われると妙に照れくさい。
「さぁ朝げをいただきにいきましょう。」
「そうだな。」
「いっぱい食べておかないと仕事にさしつかえますからね!」
「……?
ちょっと待てよ、瑣萬…。帰ってそうそう俺に仕事をやられる気か?」
「当たり前でしょうが、こちらもある程度のことは処理してきましたがね。
今はあなたが当主なのですから。
嗄波羅(さはら)様がお亡くなりになってあなたは、龍樹様を探しに行ってしばらく戻って来なかった。
その部の付けです。」
フフフと悪魔笑顔ぜんかいで言われたら、こちらに拒否権はない……。
「分かった。分かった。」
降参の白旗が俺の心のなかで上がった。


