「無事のご帰還なによりお慶び申しあげます。」
「おぉ爺か。なんだ、また小さくなったか?」
宮に入って表れたのは、龍轍の膝元ほどの背丈の人物?だった。
「背は変わっておりません。
コホン
無事、龍樹様をお探しできたのですね。お懐かしい…。」
目を細め、龍轍の腕の中の龍樹を見上げた。
「無事っか。
幼い頃のこともろもろすべて忘れているようだが。」
覚えているのは、俺の名と宮のことだけ。
「なんですと!!
あぁ、おいたわしや。あんなに元気で龍轍様の後についていらっしゃった龍樹様がすべて忘れてしまわれるとは。」
「いいんだ。これからまた作っていけばいい。その内記憶が戻るかもしれないしな。」
これから俺と過ごして、あいつのことを忘れていけばいいんだ。
「龍轍様、宴の準備が出来つつあります。」
「そうか。母様に挨拶してから行く。
龍樹が帰って来たんだから。」
母様がずっと待っていたんだ。


