「よぅ待っ――」
「おっそいわっ!!」
「すいませっ」

晴紀は俺の言葉に反射的に謝った。しかも噛んだ。自業自得だ、一時間も遅刻しやがって。

「お、二人共もう来てるな」

晴紀の視線の先には恭子と未奈美が居た。

俺は晴紀の肩をガッチリと掴んだ。

「一体どういうことかを説明してもらおうか」


今からさかのぼる事一時間前――

俺はぎりぎりかと思われた電車に案外余裕で乗り込んだ。

電車はなかなか混んでおり、幸運にも座っていった人が降りていったので入れ替わるように、電車のドアのすぐ隣の席へと座った。

携帯を開いていじってると、視界の横に何かが現れたように感じた。

顔をあげてドアの方を向くと、それはもう絵に書いたようなしわくちゃのお婆ちゃんがいた。

俺は周囲に目をやる。他に空いている席はなかった。

ふぅ、とため息をつく。俺に選択肢は無い。

俺は隣に立つお婆ちゃんへと、席を譲った。まぁ、これは普通なら常識だろう。

だがそのお婆ちゃんは常識を遥かに凌駕したリアクションだった。

「何よ!!年寄り扱いしないでちょうだい!!」

と、声を掛けた側から怒鳴られた。そしてお婆ちゃんは空いた席へと座った。