空は一面の灰色だった。そんな灰色の空の下、いつもと変わらず吹きすさぶ冷たい風に、未だに慣れることはなかった。周辺に居る他校を含めた学生達も同じように慣れている様子は当然無い。

「おーい、結!」

駅を出てからどんよりとした空を眺めていると、男が駅のホームから改札をダッシュで駆け抜けてきた。俺はそんなことを気にせず歩き続け――

「って、ま、待てよ!普通名前を呼ばれたら立ち止まらないか?」

追い付かれた。俺は隣でぜぇぜぇいってる男に視線を向ける。

「あんまり俺の名前を大きい声で叫ぶな。嫌なんだよ、女と勘違いされるの」

結(ゆい)。吉野結(よしのゆい)。それが俺の名前だ。女みたいな名前だったから教師とかにはよく勘違いされた。それに名前で判断するような男共もよく勘違いをする。今みたいに……周りから通勤・通学ラッシュのお忙しいなか、俺の名前を女と勘違いして振り向き、辺りを見回すご苦労なやつらが多少居る。

「あぁ、わり。呼び止めるのに必死、だったんだ」

と、息を荒げながら謝罪するこいつは小野市太一(おのいちたいち)。中学からの友人だ。