「俺には好きな人がいる」




名前すら覚えてない女に、そう言い残して歩きだす。




後ろから追いかけてくる気配はない。




それに安心しながら、ふと何かを感じた。




シオリが…近くにいる?



辺りを見回すが、シオリの姿はない。




気のせいだろうか。




「……」




歩くスピードを速めて、家へと急ぐ。




曲がり角を曲がったとき、シオリがいるのを見つけた。




歩いてはいるが、ふらふらしている。




俺はシオリに近付いた。