「だって…おいしいんだもん」
俯いて、目を潤ませるシオリ。
いやいや、そこ泣く所じゃないから。
心の中で呟いて、溜息をつく。
「…分かったって」
そう言うと、シオリが不思議そうに俺を見た。
褒められるのが苦手だとか、別に隠すことじゃない。
理由を伝えると、シオリは驚いていた。
「素直に、“ありがとう”って…言えばいいんじゃないのかな?」
シオリがぽつんとそう呟いた。
「“ありがとう”って…言う方も言われる方も嬉しい気持ちになるよ。」
そう言って、ニコッと笑う。
こんなこと言ってくれる女…初めてだ。
「あ、ごめん。生意気なこと言って。」
…全然生意気なんかじゃない。


