「待てよ」 いつの間にか、口がそう動いていた。 俺の声に驚いたのかなんなのか。 女は扉に手を伸ばす。 でも、その手は透けただけだった。 「…何ですか」 女がそう呟いた。 「お前、帰る場所あんのか」 …ある訳ない。 そんなの、聞かなくても分かってるのに。 「ないです」 俺は、何を言おうとしてる…?