F.L―extra―

『続きはまた今度』


そんなことを言ったくせに、あの後“優美ちゃん”が俺に手を出してくる気配はなかった。



部活では、懲りずに高塚が話し掛けてきていた。

1度謝った手前、今さら引くに引けなくなってるんだろう…

家では、継母が俺を追い出そうと毎晩親父にわめき散らしていた。






廊下で意味深な笑みを浮かべる“優美ちゃん”と出くわすたびに、

いい子ぶって俺を気にかける高塚と接するたびに、


涙と怒りで顔をぐしゃぐしゃにしながら親父に訴えかける継母を見るたびに、


俺の苛立ちは募っていた…




募りに募った苛立ちを消化するすべもないままに、“優美ちゃん”にキスをされてから1週間が経っていた。










そしてちょうど1週間目の放課後…

めずらしく部活がオフになり、だからといって家に帰る気にもなれない俺は、教室で時間をもて余していた。



「関くん、優美ちゃんが保健室来てだって」


クラスの女子にそう言われた。


「…いま?」

「大事な用事があるって」






大事な用…?

アレが…?




体は重いし、眩暈がした…





だけど俺は保健室に向かった。

向かわなければいけない…

保健室に行くことだけが、俺に課せられた使命のように感じていた。









「おい関、お前どうしたの?顔色悪いぞ?…大丈夫か」



保健室の目の前で、高塚に出くわした。

高塚は心底心配した顔つきでそう言った。



「…ほっとけ」

捨て台詞の様に俺は返した。




心配するくらいなら俺を助けろ…

一瞬そう思ってしまった

思ってしまって、そんな自分が情けなかった



誰かに縋ったって無駄…

そんな事はもう十分過ぎるほど学んできたはずなのに。


今までだって、誰も助けてなんかくれなかったのに。







俺は馬鹿だ……