F.L―extra―

「…痛っ」



イラついた気分のまま部室を飛び出したら、廊下で誰かとぶつかった。



「なんだぁ関くんじゃない?ダメよ、そんなに乱暴に廊下歩いたら」

「…はい」



俺がぶつかった相手は、保健室のおばちゃんだった。

おばちゃんっつても26歳とかそんなもんで。

結構美人で、皆からは“優美ちゃん”とか呼ばれて、結構慕われてるらしい…

なんとなく俺はこいつが嫌いで…
だから適当に返事をしてこの場から逃げたかった。


「…以後気をつけます。ではまた」

「待って!…怪我、してるでしょ?保健室行きましょう?」




怪我なんて運動部の連中にとっては日常茶飯事で、わざわざ保健室に行くほどじゃない…


この女の魂胆は見え見えだ…


中学生のガキ相手に、いちいち上目遣いなとこが気色悪い。




「さぁ行きましょ?」

「…ちょっ」

この場をどう切り抜けるか…

必死に考えている間に、強引に腕を引っ張られた。




諦めるしかない…


この手の事にも慣れてるから、この先なにが起こるか大体見当がつく…


初めてって訳でもないし、守るものなんかなにもない…


だからもう、何の感情も湧かない…




教師だけは安全だとか、根拠もなく油断してた俺が馬鹿だった。




ただ、


それだけ。