イライラした気分のまま家に着くと、


「…じゃ…ないのっ!!!」


玄関にまで響く大声で、両親が喧嘩していた。


違う。

正確にいえば、母親と俺に血のつながりはない…

いわゆる継母。



「ねぇあなた、いつになったら英嗣はこの家から出ていくの?」

「いつになったらって…英嗣はまだ中学に入ったばかりだぞ?」

「私はもう嫌よ!あんな女が残してった子供の面倒なんて見たくないの!早く英嗣をこの家から追い出して!」




あの女…

俺を産みおとした、実の母親


本当の母親は、俺が小学生のときに男をつくって出ていったらしい。

そして、そのあとすぐに継母と親父が再婚した。

継母がうちにきた、その日から俺は愛人の子扱い。



気がついてはいたんだ。

継母が俺の事をよく思ってないのは…

この家に所狭しと飾られている家族写真に、俺の姿はないから…


親父と継母と、2人の間に出来た、俺にとっては妹と弟にあたる子供たち…

この家は4人家族…

そこに俺は、入ってはいけない…



「あなたってば!聞いてるの!」




俺は音をたてないように2階の自室に向かった。

喧嘩はまだ、終わりそうにない。



ここに…

ここにも、俺の居場所はない…


そんな事は今更だ…


もう、慣れてるんだ…