部活のあと、更衣室で着替えて帰り支度をしていると、やけにうるさい声で他の1年の連中が騒ぎだした。



「高塚、すげーな!!1年のうちからレギュラーとれるなんて、珍しいだろ!!」


「まぁ高塚なら当然だろ。普段の練習から、こいつクソ真面目にやってんじゃん」




高塚諒介…

この夏に、東京からきた転校生。

転校生のくせに、あっという間にみんなと馴染んだ。

俺はクラスも部活も一緒だけど、まだまともに話したことはない…

向こうだって、女のネタにされてるだけの俺と話す気なんか、たぶん、ない…




「どーもどーも。でもほら、俺デカイから。そこでしょ、選ばれた理由。実力じゃねーよ。」


高塚は、誰にも優しくフレンドリーなやつで。


いまだって、やっかみ半分羨望半分の1年連中の下らない会話に、にこやかに付き合っている。



「謙遜すんなよ!高塚、お前バスケ上手いんだから自信持てって」

「いやマジだって…っつーか、すごいっつたら関だろ?あいつフォワードだよ、花形じゃん」


俺の名前を出した途端、部室の空気が変わった。


なんなんだよ、面倒くさい…



「でも…関くんは特別だからさ」

「そうそう。羨ましいよな…顔がいいって」




1年連中が遠慮がちに、それでもはっきりと俺を否定していた。


バシッ…


黙って流すつもりだったけど、やっぱりムカついて…



わざとロッカーを力いっぱい閉めた。





「…お先」


逃げるように更衣室を出る



『関くんは特別だから』

『羨ましいよな…顔がいいって』



あいつらの言葉が、耳から離れない。



なんだよ、特別って…

なんだよ、顔がいいって…



俺だって努力してる…

練習だってちゃんとやった…

なのに…





いつだってそうだ…



昔から俺は別枠視されて

本当の俺は、認めてもらえない…




特別ってなんだよ…