F.L―extra―

「…英嗣ったらなんて格好してるの!!」




どこをどう走ったのか

溢れる涙はいつ止まったのか



なにもかもはっきり分からないまま、気がつくと俺は、家の玄関で継母に怒鳴られめた。




怒鳴られてから、気づいた。


あの女がキスしてきた俺の唇の周りは、紅いルージュでベトベトで…
ワイシャツのボタンは全て外されたままで…

制服のズボンのベルトは、どうやら保健室に置いてきてしまったようで…





いかにも“そういうこと”をしてきた格好だった





「まだ中学生のくせに女誑かすことだけは一人前なのね…本当あの女にそっくり」



あの女、俺の実母

親父に俺を押しつけて若い男とどっかへ消えた、俺の実母





継母も、俺の方から女を誘って“そういうこと”をしたと思っていた…

高塚のように…






誰も、本当のことを分かってくれない

分かろうともしない





そんなこと、慣れてるはずだ

俺は、自分に言い聞かせていた。