講義を受けている間、僕の頭では後悔と反発と、他にも色々な感情が蠢いていた。
そんな僕を心配したのか、梁瀬が僕の額に手をあてる。
「熱でもあるのか?御琴」
「・・・ない、と思う」
梁瀬の場合、こういうのが普通なんだけど・・・。
いや、梁瀬は男だけど。さっきのアリスさんの事件のせいもあってか、触れられたときに鳥肌が立った。
なんか、申し訳なくなる。

「熱なさそうだけど、安静にしとけばいいんじゃないか?」
「ごめん梁瀬、迷惑かけて。・・・でも、平気だか「許せないんだよ」」
へ?
「なんで・・・優が、あんな目に・・・っ!!」
「え、ちょ、梁瀬っ!?」
梁瀬の大声に、同じ教室にいた奴の視線が集中する。
そもそも、梁瀬は外見が色っぽいというか、女子に好まれるタイプの奴で、視線が集まりやすいのに。
だが、今の梁瀬は完全にいつもの余裕を失っていた。
「や、梁瀬、外出よう?」
僕はとりあえず梁瀬の話を聞くためと、視線に耐えられなくなったために梁瀬の手をひいて教室を出た。

学校の敷地は広く、空が快晴のため、僕は芝生の上に梁瀬を連れて行った。
梁瀬はまだ混乱してたみたいだが、話によると。

「優くんが・・・重症?」
「全部・・・全部、あの災害のせいだ!!俺が傍にいてやれば・・・優を守ってやれたかもしれないのに・・・」
梁瀬の頬を、涙が伝う。
僕は優くんをよく知っている。
高校生の、梁瀬の弟だ。
僕にとっての美月と同じ、と考えていく。
優くんは、学校の校外授業のために災害の起きた地域へいたらしく、災害の影響で建物が崩れ、クラスメイトの女の子を守ろうとして瓦礫に挟まれ重症。
いまも意識が戻らない―・・・
そう、梁瀬は説明してくれた。
「結論から言うと・・・やっぱり、梁瀬は悪くないよ・・・」
僕の本心だった。
そして、この言葉はどこかで聴いたような・・・。

あれ?

小此木先輩が、言った言葉と、同じ・・・?
「俺は、優を守れなかった・・・。だから、優は、」
「優くんは生きてる!!」
僕は、自分でも驚いた。
叫んだことなんて、ほとんどないのに。
「・・・御琴?」