街がざわめく。
僕は美月を叔母に預けて、片桐の所へ行ってきた。

「そんなのって、ないよな・・・」

ショックじゃなかったと言えば、嘘になる。
最悪の事態しか予測出来なかったが、実際そうだと断言されて平常心でいるのなんか、当然無理なんだ。
だけどそのやるせない思いを吐き出す場所なんかない。
片桐は嘘は吐かない。僕と違って。

「美月・・・」

彼女は、僕のただ一人の家族であり、妹だ。
まだ大学生の僕は、小学生になったばかりの美月の世話は叔母に頼り続けているが、叔母や叔父は快く受け入れてくれている。まるで本物の家族のように。
両親は・・・海外に行ったまま、10年近く帰ってこない。

「ま、あの人達は・・・な」

そういう親だ。今頃どこで何をしてるのか。
あんな親について行くと美月が疲れるだろうし、僕としても大学は卒業したい。
都内のごく普通の大学で僕は講義を受けるために、いったん叔母に連絡をいれた。

そして、やはり今も平然と流れていく時間。
交通機関がストップしていることなど、僕には関係ない。
僕はのんびり歩くことが、目的なのだから。

・・・が。