「御琴」
「な、何・・・?」

「あなたは日本の関東と関西が引き裂かれる、という話を知っているかしら」

「は・・・はぁ?」
知らないのか、という冷たい目で梓がこちらを見る。・・・理不尽すぎる。
「関東の大陸と関西の大陸は、今、割れようとしている、という話をインターネットで聞いたことがあるわ。私はそれを事実だと思っている。その論は、かなり色々なものを詰め込んでいたから」
「・・・」
関東と関西が引き裂かれる。
大陸という意味で・・・とすると。

「に、日本が真っ二つになる?そんなこと・・・」

「地殻変動、という言葉を知ってる?」
「え、えっと・・・」
「地球の外側の変動、みたいなものね。日本ではそれがここ何年か続いている」
梓が黒くて艶やかな髪を手で払う。
「教えてあげるわ、御琴」
「えっ・・・?」

「タイムリミットは分からないけれど、いずれ東京大震災が起こる。東南海プレートは、動くわ」

「と、東南海プレート・・・?」
「後で調べなさい。とにかく、現在の震災も予測していた人物はいるの。意外と多くね。小此木博士もその一人だった」
梓は僕を見据えて、呟く。
「私もよ」

この日、彼女が告げた『最悪の未来』。
それは、この震災を他人事と判断してしまった大都市の最期だ。

「全ての事件は繋がっている。1つの大きな事件になるまでに小さな事件は100起きている。そしてそれより前に小さな異変は1000起きている」

梓は、僕に告白した。

「これは、ただのハジマリにすぎないのよ。最悪の事態を免れるには、抗わないといけないの」

―僕と彼女の、約束
――彼女はそれを果たすために、生き延びた。



全て、そこからはじまったのだから。