「藍澤さん、どうして遅刻してきたの?」


おばあちゃん先生が、眠くなるくらいゆったりとした口調で小首を傾げた。

ふわふわと先生の周りだけ世界が違うような、穏やかな空気が包み込んでいる。


帰りたくて、心細くて、仕方なかったけど。

少しだけ回避できた気がする。


「寝坊です」



『執事と朝から口喧嘩してました。』そんなこと馬鹿正直に言うより寝坊がベタよね。
学校に行く予定すらなかったんだもの。


「次は、気をつけるのよ」

「はい」



私が返事をしたのと同時に、再開された授業。



「ふぁ……」



窓の外を見ながら、小さな欠伸をひとつ。


こんなの分かる。簡単すぎよ。

説明なんていらないわ。


すごく退屈。
やっぱり、学校なんて来るんじゃなかった。