零…早く来なさいよ。


じわっと目頭が熱くなる。

目を開いてしまったら、涙が溢れてしまいそう。



足元を通る、少し冷たい風。

チェックのスカートを膨らませる。




不思議に思い、ゆっくり目を開くと…


「お嬢様、お車がご用意できました」



零の姿がいっぱいに広がる。

一瞬にして彼のすっとした輪郭が崩れ始め、涙がポロポロと頬を伝う。



「れ…零ぃ……っ」


心がほわっと灯がついたみたいに温かくなって。

でも、なんだか切なくて。


自分でもよく分からないくらい、安心した。

いつもどれだけ零が隣にいてくれるかが分かる。


私、情緒不安定だ……
みっともない。


零はそんな私を見て、ビックリしたように目を見開くと目線を合わせるように跪いてくれた。


「どうなさったのです?」


徐に口を開いたかと思うと、朝のように優しく拭かれた涙。