はっと一瞬目を見開いたかと思うと、にやにやといやらしく顔を緩めた零。



『もしかして…怖いのですか?』


カチンッ


「べ……っ別に怖くなんか…!!」


思わずムキになってしまうあたしの口元に、そっと零の人差し指が触れた。



『上映中はお静かに』



余裕たっぷりの笑顔に言い返す言葉もなく…

あたしは目をつぶり寝ることにする。


目を瞑っていても聞こえてくる……

悲鳴や不気味な床か何かが軋む音。


……もういいか。

怖くない、怖くない。


第一、あんなものがこの世にいるはずがないわ。

いたらもっと大騒ぎになってるもの。


ただのフィクション。

ちょっと映像が怖いだけの映画ね。


そんなことをただひたすら考えて、意識をそらす。



そうこうしてるうちに…

終わったらしく、ゆっくりと館内が明るくなった。