こんな零にドキドキなんて、私おかしい。



「申し訳ございません」



零はそう深々と頭を下げ、フレンチトーストを私の一口サイズに切り分けていく。


相変わらずの手際の良さ。
零の手元に視線が集中する。


ドキドキの理由なんて、もう知らない。


今はフレンチトーストだ。



「待ちきれないのですか? そんなに見つめて……」



クスクスと小さな掠れたような笑い声がふってくる。



睨みつけようと見上げると、

「そんなんじゃない…わ、ょ」


真横には零の綺麗な横顔。

つるつるなまるで陶器のような白い肌。


さっきまでのドキドキとは一転して、心臓が五月蝿いくらいにバクバクと動き出す。



あ……嗚呼、心臓が口から出てしまいそう。

出ないように、きゅっときつく口を結ぶ。




そんな私を見透かしたように、ふわっと耳元に息がかかった。