何度言ったら分かるのよ。
これは私に対しての嫌がらせなのかしら?
また零を睨む。
すると意地悪そうに微笑み返す零。
~~~憎たらしいっ!
馬鹿零、阿呆零っ!!!
今にも爆発しそうな怒り。
それを止めたのは、甘いハチミツの香り漂う私の大好きな食べ物。
手前に置かれた、大好きな大好きな……
フレンチトースト。
「零、フレンチトースト頂戴」
「フレンチトーストはもう定番ですね」
クスクスと小さく口元に手を置きながら笑みを浮かべていた。
その姿はとても、綺麗。
艶やかな唇が少し開いた、その奥にチラリと見える八重歯。
「もう、笑ってないで早く取ってよ」
そんな彼を見ないように、私は磨かれたナイフとフォークを指先でなぞる。
何、ちょっとドキドキしてるのよ。