ふんっと鼻を鳴らせば、ぷいっとそっぽを向く。

『ありがとう』その一言が言えない。



……言えるはず無いわ。

だって、私だもの。



「シェフが不登校気味のお嬢様のために腕を振るってくれたみたいですよ」



零はにっこりとわざとらしい笑顔を浮かべながら、木製の椅子を引く。

スカートがしわにならないように丁寧に座る。



「不登校気味って何よ…制服に着替えてあげたし、仕方ないから行ってあげる」



見下ろす零を睨んで、テーブルに目を移した。


綺麗に磨かれたテーブルに並ぶのは…

食べるのがもったいないくらいに綺麗に盛り付けされた果物。



――…国産牛のローストビーフ。


肉は嫌い言ったのに。
いらないって言ってるのに。

食べないって言ってるのに!


どんなに高級でも肉は嫌いなの!!!