「は…早く、朝食を用意するようシェフに言って頂戴…着替え終わったら…行くわ」



ムカムカする胸を押さえ、静かに言う。

ここで折れるのが大人よ。
零は子供だから、私が大目に見てあげるの。


「かしこまりました、お嬢様」



そんな私の姿を見て、またニヤリと笑った零が部屋から出て行くのを見送る。



「何…アレ。すごく苛々する」



あんなのにときめいては駄目よ、朱里。

絶対ありえない。
好きなんてありえない。


あんなに性格が悪くていやらしい執事!!


目、

あの声、

細い指、


思い返すと、胸の辺りがチクリと傷む。



どうしてあんなに憎たらしいのに、苦しくなるの?





「嗚呼…朝から憂鬱だわ」