――カタッ
簀の音がして、やばいと思った時にはもう遅かった。
静かにもう少し、隠れているつもりが、フッと、携帯が手から滑り落ちてしまった
「………しおり?」
見なくてもあたしだと、わかる秋はやはり凄い。
長く付き合って来ただけあると思う。
「へ、へへ。見るつもり無かったんだけど、ごめん!」
と顔の前に手のひらを合わせた両手をだす。
「あー、うん」
と、たったそれだけの返事。
―…わかってるよ、優しい秋は、傷付いてること。
今まであたしがどれだけあなたを見てきたか、秋は、知っていますか?
「ねぇ!秋!今からあたしとデートしよ?」
「は?」
と、不機嫌に秋は顔をしかめる。
「…ね?お願い!」
と、ごり押しするように、言えば。
「……わかったよ、ほら。行くぞ」
と自分の髪の毛をくしゃっとやりながら、歩き出す。