「…リーシィ、機嫌が悪そうだね。」



にこにこ笑いながらリーシィが入ってきた。


ただそれは決して暖かい笑みではない。



「あら、顔に出てしまっているかしら?

隠しているつもりだったんだけれど。」



バレバレですね。


だって僕には見える。


額の怒りマークと頭上に浮かぶイライラという文字が。



「何かあったの…って聞くまでもないか。」



どうせ可愛い(?)弟さんの婚約者のことだ。



「聞きたい?

なら教えてあげるわ。」


誰も何も言っていないが。


まぁ今のリーシィに何を言っても無駄か。



「シュリアのご両親に、何・故・か挨拶に行くことになったのよ。」



何故ってそんなの決まっている。



「結婚前だからじゃ…」


「黙りなさい?」



よし、おとなしく黙ろう。



「リーシィ様はご結婚に反対しているのですよね。

ならばイライラするのも仕方がないかもしれません。」


「さすがね、セオリー。

私のことをわかっているじゃない。」


「だけどそれだけであんなに機嫌が悪くなるの?」



と自分で聞いておいてなんだが、リーシィならなりそうだ。


シュリアのことを毛嫌いしているもんな。



「私も行かなくてはならないのよ。

未来のお姉様だからみたいね。

まったく私は認めていないというのに。」



わかったからもう笑わないでほしい。


恐ろしすぎる。



「親に会わせたもん勝ちという考え方がまずムカつくわね。」



何をしたってシュリアだったらムカつくだろうに。



「何かしら、カイヒ?」


「いえ、何も。」



どうやら表情に出てしまっていたらしい。


気を付けないと。