紅蒼ノ魔女(仮)

笑顔が固まった。


あ、やばい。



「あははは。

本当にね、早く帰って欲しいわよね。

でも帰らないんですって。」



リーシィの顔が迫ってきて、冷や汗が垂れる。



「このまま結婚式をあげてここに住むそうよ。

今は花嫁修行期間らしいわ。

家事とかもやらないくせに何を修行するのかしらね?」



僕に聞かれても…


誰か、彼女を止めてくれ。


その笑顔が怖い…!



「ま、まぁ落ち着いて。

仕事あるんでしょ?

早く行かなきゃ!」



くるっと彼女の身体の向きを変えて背中を押す。



「じゃ、僕行くね。」



小走りで逃げた。


まだ何か言っていたような気がするけど、僕には何も聞こえなかったってことにしておこう。


しばらくして一度足をとめた。



「…書庫にでも行くか。」



そう呟いて今度はゆっくりと歩き出した。



_________
___________


「ちょっと、何よこのドレス!」



聞いたことがある叫び声、というより怒鳴り声。


はぁ。


リーシィの次はシュリアか…



「私この色嫌いって言ったじゃない!」



その色とは僕の魔女の時の髪の色。


つまり紅色だ。



「も、申し訳ありません!」



頭を思い切り下げて謝るのはメイド服を着た女の子。


歳は多分僕と同じぐらい。


新人さんかな?