しばらく無言でお互いを見ていたが。



ふっ、と突然蒼魔女が笑った。




「あなたに話すことはありません。だけど……」




一度そこで切ってから言葉を続けた。




「悪いのは人間、これだけは教えてあげましょう。」




そう言って、蒼魔女は目の前にいる姉さんに向かって。



魔法を放った。



大きな爆発音と共にまた煙があがった。




「っ!姉さん!!」




一瞬だけ見えた姉さんに叫ぶと、こっちを向いた。



その時姉さんは……



やはりおかしそうに、そして楽しそうに笑っていた。




「人間ごときが、調子をこくからです。」




その呟きは、とても冷たくて、苦しそうに聴こえた。



蒼魔女はシュリアのもとへと歩いていく。



怯えているのが見えたが、俺は動かなかった。



いや、動けなかった。



何故なら。



声が聴こえたから。



蒼魔女でも、紅魔女でも、ましては姉さんでもない。



俺の……



俺の、大切な人の声が。




上がった煙が消えた。



そして目に入ったのは。



壁や天井が崩れた破片の山と



おそらく少しだけ傷を負った、笑顔の姉さんを抱えている、




「間に、合ったのかな。」




綺麗な紅色の髪をなびかせた少女だった。