空は暗くなってきていた。


星がちらほらと見え始めている。


風が思ったよりも冷たくて、身体が震えた。



「カイヒはあれが真実だと思うか?」



サイリが静かな声で話しかけてきた。


周りを見るが、人の気配はない。



「思ってないよ。

だけど多分、真実もあったはず。」



ただどこまでが真実か。



「俺が魔女に助けられたことがあるのを、お前は知ってるだろ?」


「うん。」


「あの時2人の魔女が助けてくれた。

…これから話すことは誰にも、姉さんにだって言ったことがない。」


「…大丈夫。

絶対に他言はしない。」



サイリが長い間、隠してきた秘密。


そこにもヒントがあるはずだ。



「俺を助けたのは、2人の魔女。

紅色と蒼色の魔女。」



まだ小さかった俺だが王子という立場のせいで、当時から訓練をさせられていた。


それが嫌だったという訳ではないが、ふと遊んでみたいと思うことがあった。


だけどとくに行動は起こさなかった。


そこまでの強い想いではなかったから。


ある時、俺は家族でロトニに行った。


昔から交流のある国だからそれまでにも何回か行ったことがあった。


だから面白いものがある訳でもないことがわかっていた。


…少しだけシュリアを嫌がっていた覚えはあるが。


両親や姉さん達が話をしている時、俺の目に城の外にある森が映った。


そして何故か無性に行きたくなった。


俺は迷わずに外へ飛び出して行った。


途中までシュリアもついてきたが、森に入ろうとすると足をとめた。


それでも走っていく俺に向かい、シュリアは叫んでいた。


魔女、という言葉が入っていたことだけは確かだ。


でも気にせずに奥へと進んで行った。


城からずいぶんと離れて、はっと我に返った。


すぐさま戻ろうとしたが暗くなっていし、どこから来たのかわからなくなってしまった。


とりあえず歩いてみると人の気配がした。


俺はよし、と思って気配を辿って近付いていった。