待ち合せ

そうだ…。



昨日駅まであと少しの横断歩道で
車に轢かれたんだった。


そうだよな。


だからお前に昨日会えなかったんだ。


今日も時計台に「生きている俺」は行けなかったんだ。



人気のないバスでお前を1人っきりにしとくと
心配だったから俺、このバスに乗ってたんだった。


「今日だってもしかしたら浩幸がくるかも…」
そういうことか。



バスに遅れそうだったのは
来るはずもない俺をギリギリまで待ってたからだよな。
お前はそういう奴だもんな…。


さっきからどうもおかしいと思ったらそういう事か。
里香には、俺が見えていない。
そして、


「浩幸…会いたいよ……。」


声さえも届いてなかったんだ…
会話じゃなかった。
里香の心の声に俺は話しかけていたのか。

『俺はここにいるよ…』