山荒の鳴く夜

シイの反応は速かった。

咄嗟に後方へと飛び退く。

それと同時に天才剣士は動いた。

両手で柄を握り締めての、刺突!

だが届かない。

(かわした!)

シイは確信する。

二度目の刺突。

これも回避成功。

(よし、反撃を…)

そう考えたシイの視界の片隅に、何かが映る。

そしてその正体を知った時、彼は一気に血の気が引く。

視界に映ったのは、シイの下半身。

二度目の刺突を回避したのは、シイの『上半身だけ』。

既に一度目の刺突によって、シイの上半身と下半身は別れを告げていたのだ。