山荒の鳴く夜

畏怖した己を振り払うように、シイは毛針を乱れ撃つ。

数十本、いや数百本か。

まるで弓兵部隊の放つ一斉射、或いは幕末になって西洋より伝来したという銃火器『ガトリング砲』のようだ。

その毛針を以ってしても。

「!!」

天才剣士の動きを捉える事は叶わない。

毛針が着弾する頃には、既に彼女…の姿をした彼はそこにはない。

直後、背筋を走る悪寒。

振り向くと。

「殺ったぞ、人外」

刺突の構えを見せる天才剣士の姿!