「藤堂!」

椿が到着したのは、その直後だった。

油小路に響き渡る炸裂音。

路地に飛び散る血飛沫。

「…へっ」

平助は笑う。

彼の放った平刺突。

その切っ先は、シイの体を貫く事なく彼の牙によって止められていた。

そしてその一撃と引き替えに、数本の毛針が平助の体を貫く。

「流石はケダモノ…剣を口に咥えて止めるかよ…」

崩れ落ちるように、平助がその場に倒れる。

「『藤堂さん』!」

椿は倒れた平助に駆け寄り、返り血に塗れるのも厭わず抱き起こす。

「お…おいおい…また…さん付けで呼んでるぜ…?」

「喋らないで!傷に障ります!」

平助の言葉にも耳を貸さず、椿は着物の袖を引き千切って包帯代わりにする。

特に出血の酷い箇所をきつく縛り、傷口を圧迫して止血する。

幸いにして急所は外れている。

毛針の直撃を受ける寸前で、平助自ら身を捻って急所を外したのだろう。

流石は元新撰組組長だ。

そう簡単には死なない。