椿と平助の邂逅から、四年の月日が流れていた。

慶応三年(1867年)十一月十八日、油小路。

(随分と間抜けな事になっちまったな…)

平助は抜刀したまま、周囲を取り囲む侍の集団に油断なく視線を走らせる。

包囲しているのは新撰組。

かつての仲間であり、己の部下達だ。

平助ら多くの隊士を引き連れて新選組を離脱し御陵衛士(高台寺党)を結成した新撰組参謀、伊東 甲子太郎が勤王倒幕運動に勤しみ、薩摩と通謀して近藤 勇を暗殺しようと企んでいる事が、新選組が間諜として潜り込ませていた斎藤 一によって明らかとなった。

そこで新撰組副長、土方 歳三を中心とした面々が粛清に乗り出したのである。

『士道に背くあるまじき事』

新撰組局中法度は、いつ如何なる時も絶対であった。