山荒の鳴く夜

「それで…」

少しでも早く話題を変えたい。

椿の方から平助に話しかける。

「死んだ筈の新撰組八番隊組長殿が、こんな所で何をしている?」

皮肉たっぷりに問いかけてやるが。

「ちと人を探している」

平助は彼女の挑発に乗る事なく平然と答える。

「いや、違うな…人じゃねぇ。化け物だがな」

「……」

すぐに思い当たる。

この京で、今『奴』は話題の的になりつつあるらしい。

「山荒…か?」

「ほぅ?」

平助がニヤリと笑う。

「『長州派の沖田 総司』も奴をお探しか」