山荒の鳴く夜

平助の発言の真意はともかく、彼が斬りかかってくる気配はない。

とりあえず椿は刀から手を放す。

「しかし何だな」

腕を組み、顎の無精髭を撫でながら平助はニッと笑う。

「『長州派の沖田 総司』とはよく言ったもんだ。その短気ぶりといい、生真面目な所といい、お前は本当に沖田に似ている。剣腕はどうか知らんがな」

「試してみるか?」

せっかくおさめかけた怒気を、椿は抜刀して刺突の構えを取る事で再び露わにする。

「落ち着けって。全く…得手まで刺突技かよ…ますます沖田そっくりだな」

椿の気の短さに辟易といった様子で、平助は溜息をついた。