いつでも抜刀できるように、片手を刀の柄にかけたまま歩く。

路地の陰から、闇の中から、背後から。

いつ何時、何者が襲い掛かってきても不思議ではない。

それこそ人ならざるもの…山荒のような人外が襲ってきたとしても、納得できてしまえそうだ。

人斬りなどという人間を殺める役目を負っていると、時折思うのだ。

こうして自分が斬った者の命は、成仏できぬままこの京の街に漂っているのではないか。

怨念を残したまま街を彷徨い、やがてこの京都はこの世とあの世の境目が曖昧になっていくのではないか。

この街が時に『魔都』などと称されるのは、自分のような人斬りが数多の人間を殺めたせいなのではないだろうかと。

この京の街は、魔界という名の異界と繋がっているのではないかと…。