その夜から椿は山荒を探す為の行動に入っていた。

といっても相手は恐らく人外。

幕府方の侍ならばある程度行動は予測できるが、人間ですらない山荒を探すなど、手掛かりすらあろう筈がない。

椿にできる事といえば、虱潰しに京の入り組んだ路地を探し回る事くらいだった。

…夜が現代よりももっと濃く深かった時代。

深夜ともなれば灯り一つなくなり、雲が月や星を隠せば、完全なる暗闇が訪れる。

闇の中に何が潜んでいようが不思議ではない、漆黒の夜。

不用意に出歩く事さえ憚られるほどの、身震いするような夜だった。