山荒の鳴く夜

姿勢を正し、椿は恭しく頭を下げる。

「桂様…高遠 椿、妖探索方の役目を謹んで承ります」

「そうか、受けてくれるか」

桂もほっと胸を撫で下ろす。

「このような時期だ。そう多くの人間を割く事はできん…君のような有能な人材に任せるしかないのだ。危険な任務を一人に押し付けてしまう事、許して欲しい」

「いえ…お気になさらず」

刀を握り、静かに立ち上がる椿。

その表情が、冷酷で容赦のない人斬りのそれへと変貌していく。

「必ずや仕留めてみせましょう…その『山荒』とやらを…化け物の化けの皮を剥いでご覧に入れます…」