高遠 椿(たかとお つばき)。

京都見廻組の侍を五人ほど斬った、この齢十七の娘の名前である。

長州派維新志士で表舞台には顔を出さず、もっぱら志士狩りを行う新撰組や京都見廻組から仲間を守る事を任務としている。

いわば裏方役の『人斬り』。

歴史に名こそ残ってはいないが、彼女は幕末で五本の指に入るほどの暗殺剣の使い手であった。

「さぁ…」

長州派志士、その仲間が逃亡した細い路地を塞ぐように立った椿は、愛刀『愛染虎壱』の刃を返す。

「ここで退くならよし…まだ私の仲間を追おうとするなら、もう何人か地べたに血を啜らせる事になるけれど…」

冷徹なまでの表情で、彼女は大の男達を竦み上がらせる。