山荒の鳴く夜

「何にしてもだ」

桂は軽く咳払いをする。

「下手人が人外だろうとそうでなかろうと、このまま捨て置く訳にもいかない。このまま倒幕するにあたり、不安要素は残しておく訳にはいかぬのだ…そこで高遠君…君にその下手人の捕縛、或いは始末を任せたい。『妖探索方(あやかしたんさくがた)』…君にはその肩書きを与えておく。長州派の者にも、協力は惜しまぬように申し伝えておく」

まさか妖怪退治を命じられるとは。

流石の椿も言葉がない。

が、彼女の役目は長州派の障害となる者から仲間を守る事。

相手が幕府だろうが新撰組だろうが、人外だろうが例外はない。

仲間を傷つけるならば斬る。

それが人斬りとしての椿の任務なのだ。