私の髪を初めて染めたのは、イリヤだった。




その日は、雨が降っていた。




美容院に行くお金なんかなかった私たちは

おこずかいをかき集めて、近所のドラッグストアでヘアダイを買った。




虹のように並ぶ、たくさんの色の箱。




同じ茶色でも、すべてが微妙に違う色。




「リアちゃん、でもどうして髪の色を変えたいの?
僕は、真っ黒でキレイなリアちゃんの髪が好きだよ。」



イリヤは薄茶色の髪を揺らして、本当に不思議そうに聞いた。



「イリヤの髪が茶色だから。」


「どうゆう意味?」


「わかんない。」


私は、イリヤの頬の傷を見た。


ピンク色に腫れた、誰かの拳のあと。



私は、わすれない。